「同じことを言ってるのに評価が割れる」案件:高次脳機能障害/TBIで医療職間の記載差を“矛盾”にしない(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)の記録は、医師・看護・OT・ST・心理・MSWなど、職種ごとに視点と記載文化が違うため、同じ患者でも「問題なし」と「問題あり」が並立することがあります。
この状態を放置すると、相手方は“良い記載”だけを採用し、こちらは矛盾説明に追われて主戦場(生活支障・監督の必要性)から外れます。

一方で、この記載差は、適切に整理できれば「場面依存」「負荷で顕在化」「支援が前提」という高次脳機能障害の特徴を説明する材料になります。
重要なのは矛盾を消すことではなく、時系列と場面で位置づけ、争点に沿って意味を固定することです。


記載差を放置すると起きがちな落とし穴

  • 医師記載が要約的で「安定」「問題なし」が独り歩きする
  • 病棟・リハの具体が埋もれ、生活支障が立証できない
  • 「できる」記載と「できない」記載の混在が信用性攻撃に使われる
  • 検査点数や画像の強弱に議論が回収され、臨床経過が消える
  • 争点(就労・監督・将来見通し)の整理がブレて、結論が弱くなる

資料が多い案件ほど、この落とし穴にはまりやすいです。


医療職間で記載が割れるのは“異常”ではない

職種ごとに、見ている場面が違います。

  • 医師:診察室中心(短時間・要約・方針)
  • 看護:病棟の長時間観察(夜間不穏、指示の通り方、安全面)
  • OT:段取り・遂行・注意配分(生活課題に近い)
  • ST:会話・理解・社会的行動・病識(認知コミュニケーション)
  • 心理:検査条件下の能力(点数と解釈)

つまり、記載の差は「誰が正しいか」ではなく、「どの場面の何を切り取っているか」の違いで生じます。
この構造を説明できないと、矛盾として処理されてしまいます。


争点で強くなるのは「良い記載」を消すことではなく“条件”を示すこと

相手方は「自立」「問題なし」「改善」を拾います。ここに対して、こちらがやりがちな誤りは、良い記載を否定しようとすることです。
実務で強いのは否定ではなく、

  • その“良い状態”が成立する条件(場面・支援・負荷)
  • 条件が外れたときに破綻する領域(就労・IADL・対人)
  • 時系列上の位置(いつの話か)

を固定することです。
これができると、良い記載と悪い記載が「矛盾」ではなく「症状の特性」として整理できます。


記載差が大きい案件ほど「線(急性期→回復期→生活期)」が必要になる

医療職間の記載差は、点として並べるほど混乱します。
線でつなぐと整理しやすくなります。

  • 急性期:混乱・健忘・不穏などの観察事実
  • 回復期:リハ場面での課題・介入(条件付きの成立)
  • 生活期:家庭・就労での破綻(支障の具体)

この線が通ると、「医師は問題なしと言っている」型の反論に対しても、病棟・リハ・生活期の一次資料で厚みを作りやすくなります。


実務で強い進め方:一次確認で「矛盾の核心」と「争点に効く一本線」を作る

記載差がある案件は、読み込むほど時間が溶け、しかも要点がぼやけがちです。
一次確認では、手元資料の範囲で

  • 争点に対してどこまで言えるか
  • “矛盾”に見える点の核心はどこか(どの場面差か/時期差か)
  • 核になり得る一次資料はどれか
  • 不足資料・追加取得の優先順位
  • 次におすすめの対応(詳細/依頼状ドラフト/医学意見書)

を短時間で整理し、矛盾を弱点にしない設計へつなげます。


ご相談(弁護士・法律事務所向け)

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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