「現病歴(HPI)」の一文が勝負を決める:高次脳機能障害/TBIで初診カルテを軽視しない(弁護士向け)
結論(先に要点)
高次脳機能障害(外傷性脳損傷:TBIを含む)では、後から「主観」「後出し」「画像軽微/陰性」と言われやすい分、初期の記載――特に初診カルテの現病歴(HPI)や受診理由の一文が、因果と症状像の土台になります。
初期の一文は短くても、「いつから」「何が」「どの場面で」起きていたかが固定されやすく、後工程(時系列整理・意見書・反論対応)だけでなく、将来介護費・見守り等の“将来費用”を積む局面でも効いてきます。
一方で、初診カルテは要約的で表現の癖もあり、読み方を誤ると逆に不利になります。まずは手元資料の範囲で「どこまで言えるか/不足は何か/次に何を集めるか」を短時間で整理し、初診記載を“土台として使えるか”を見極めるのが合理的です。
※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第1回です。
将来費用は「何を積むか」以上に、どの資料のどの記載を根拠にするかで強度が変わります。本稿では、その起点になりやすい初診カルテの現病歴(HPI)を扱います。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。
初診カルテを軽視すると起きがちな落とし穴
初診カルテは事件全体の“物語の起点”になりやすい資料です。軽視すると、次のような落とし穴が生じやすくなります。
- 後からの説明が中心になり、「後出し」「主観」と反論されやすくなる
- 症状の開始時期が曖昧になり、因果の入口で切られる
- 「当初は軽い」ストーリーを相手方に作られ、こちらが後追いになる
- 生活支障が医療記録に乗らず、家族申告中心になって弱くなる
- 後の資料(OT/ST、就労等)を積んでも、出発点が薄く線が通らない
HPIは「事実の固定」になりやすい(後から動かしにくい)
現病歴(HPI)は、医師が「この受診で何が問題か」を把握するための記載です。
そのため、後から見たときに次の要素が“固定”されやすい性質があります。
- 症状の開始時期
- 受傷との時間関係
- 生活上の困りごとの初期像
相手方が「当初の記録では…」と切り出すとき、最初に参照されることも少なくありません。
将来費用にも効く:初期像が弱いと「過大」「後出し」にされやすい
将来介護費・見守り・将来治療/リハ費などの将来費用は、「生活上どの場面で、どの程度の支援が必要か」が問われます。ここで初期像が弱いと、
- 制度で足りる
- 家族で足りる
- 過大
- 後出し
といった反論の的になりやすくなります。
初診HPIや受診理由に、困りごとの初期像(例:外出の安全、服薬・金銭管理、遂行面の崩れ等)が少しでも固定されていれば、後工程の将来費用スクリーニング/将来費用積算表で「必要性の根拠」として効いてきます。
初診が薄いのは普通。問題は“薄さの意味”を誤解されないこと
初診カルテは時間が限られ、身体症状や緊急性が優先されるため、認知面や生活支障が薄くなることがあります。
ここを「書いてない=ない」と処理されると不利です。
だからこそ、初診の薄さを前提に、急性期の看護・救急記録、回復期のOT/ST、生活期の就労・家族情報へつなげ、線として補う設計が必要になります。
初診記載が不利に見えるときこそ、時系列で“限定性”を示す
初診に「意識清明」「会話成立」などの良好所見があると、相手方はそれを採用しやすいです。
ただ、高次脳機能障害は場面依存・負荷依存のため、初診の短時間の印象だけで全体を決めるのは危険です。
初診の良好所見を否定するのではなく、
- その所見がどの場面・どの時点のものか
- その後の看護・リハで何が観察されているか
- 生活期でどう崩れているか
を時系列で示せると、「初診の一文」に回収されにくくなります。
実務で強い進め方:一次確認で「初期記載が土台になるか/弱点になるか」を判定する
初診カルテは、案件によって“効く”にも“弱点”にもなります。
一次確認(資料スクリーニング)では、手元資料の範囲で次を短時間で整理します。
- 争点に対してどこまで言えるか
- 初期記載の強い点/弱い点はどこか
- 空白を埋めるべき資料は何か(優先順位)
- 次におすすめの対応(詳細/依頼状ドラフト/医学意見書/将来費用の要否)
初診記載を相手の武器にさせないために、最初に“地ならし”しておくのが合理的です。
次回(第2回)予告
次回は、将来費用でまず揉めやすい「制度で足りる/家族で足りる/過大」を前提に、将来費用スクリーニング(A4 1〜2枚)で「何をどこまで積むか」「不足資料は何か」をどう整理するかを解説します。
ご相談(弁護士・法律事務所向け)
交通事故・TBIを含む高次脳機能障害案件について、受領資料を「資料名・日付・該当箇所」の根拠付きで時系列に統合し、矛盾・空白・反論ポイント候補を整理します(メール完結)。
- 一次確認(資料スクリーニング):通常 33,000円/3営業日
- 【初回限定】新規の弁護士・法律事務所さま:一次確認 1件無料(1事務所1回/重複割引なし)
- 医学意見書:220,000円(税込)
- 将来費用:将来費用スクリーニング 55,000円(5営業日)/将来費用積算表 220,000円〜
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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。
