家族メモ(生活上の困りごと)を証拠に寄せる:高次脳機能障害/TBIで反論されにくい書き方・残し方(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(外傷性脳損傷:TBIを含む)では、生活上の支障が診察室で見えにくく、家族メモが重要な補強になります。ただし「困っている」だけだと主観扱いされやすいので、実務上は、

  • いつの出来事か(時系列)
  • 何が起きたか(具体)
  • どれくらい起きるか(頻度・再現性)
  • どんな条件で起きるか(環境負荷・疲労等)
  • 医療/リハ/就労記録とどう整合するか(接続)
    を揃えると、反論されにくくなります。

家族メモが弱いと起きがちな落とし穴

  • 「主観」「誇張」「利害関係者の申告」と片付けられる
  • 出来事が時系列に置けず、事故との関係が説明しづらい
  • “できる日”の記載がなく、選別的に見える
  • 医療記録や検査所見と接続できず、点数勝負に引き戻される
  • 具体が少なく、何がどの程度困難なのかが伝わらない

視点:メモは「症状名」ではなく「出来事」で書く

避けたい書き方:

  • 「注意障害がある」「記憶障害がひどい」

強い書き方(出来事化):

  • 予定を二重に入れ、指摘しても本人は納得できず口論になった
  • ガスを消し忘れ、同じことが月に数回起きる
  • 職場からの指示が3つ以上になると混乱し、別作業に逸れて戻れない
  • 会話中に話題が飛び、相手の反応が悪くなっても気づかない
    → 後で争点(遂行、注意、社会行動、IADL/就労/対人)に接続しやすくなります。

視点:頻度・再現性・条件(環境負荷)を入れる

反論を減らすには「どれくらい」「どんな時に」が重要です。

  • 頻度:毎日/週○回/月○回
  • 再現性:同じ場面で繰り返すか、たまたまか
  • 条件:疲労、睡眠不足、騒音、割り込み、同時処理、対人ストレス など
    これがあると「例外的出来事」の扱いになりにくいです。

視点:医療・リハ・就労記録への接続を意識する

家族メモ単独では弱く見えるので、接続できる点を残します。

  • 同じ時期の外来記録、OT/ST所見、看護記録に似た記載がないか
  • 神経心理検査の実施時期と、生活上の困難が一致しているか
  • 復職・配置転換・指導内容など、職場の出来事とつながるか
    → 「根拠の束」として扱えるようになります。

実務で強い整理の仕方(最小の型)

家族メモは、次の最小の型で残すと、資料化しやすいです。

  • 日付(いつ)
  • 場面(家庭/外出/買物/職場等)
  • 出来事(何が起きた:具体)
  • 頻度・再現性(どれくらい起きるか)
  • 条件(疲労・環境負荷など)
  • 影響(安全、金銭、就労、対人など)
  • 裏取り候補(同時期の医療/リハ/就労資料があればメモ)

これを時系列に置くと、空白の埋め方や、医師への追加質問(依頼状ドラフト)にも落としやすくなります。

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※本記事は情報提供であり、医療行為・診断ではありません。

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