家族申告を“根拠”に変える:高次脳機能障害/TBIで「主観と言われる」リスクを下げる資料設計(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)は、症状が「見えにくい」「場面で揺れる」ため、生活期の実態は家族の説明に頼らざるを得ない局面があります。
ただし実務では、家族申告が前面に出るほど、相手方から 「主観」「後出し」「盛っている」 と整理されやすく、立証が弱くなることがあります。

鍵は、家族申告を“排除する”ことではなく、医療記録・就労資料・行政書類等と接続して、申告を「出来事の記録(再現可能な形)」へ寄せることです。
この整理ができると、医師文書が薄い案件でも「生活上の支障」を通しやすくなります。


家族申告が強いはずなのに、争点で弱くなる落とし穴

  • 「困っている」の説明が抽象語中心になり、反対当事者に“印象”として処理される
  • 時期が曖昧で、「いつから?」に答えられず、因果・経過の説得力が落ちる
  • 良い日/悪い日の揺れが整理されず、「たまたま」「一時的」と回収される
  • 医療記録(OT/ST・看護・外来記録)と接続されず、「記録にない=ない」と切られる
  • 就労・学校・行政の情報と整合を取らないまま提示し、矛盾を突かれる

家族申告は重要ですが、使い方を誤ると「信用性の争い」に引き込まれ、主戦場(生活支障・監督の必要性)から外れます。


家族申告が“強い根拠”になるのは「具体」「時期」「反復」で組めたとき

家族の説明が説得力を持つのは、評価ではなく、次の形に寄ったときです。

  • 何が起きたか(出来事として説明できる)
  • いつ頃から、どのくらいの頻度で起きているか(時間軸)
  • どんな条件で悪化し、何があると持ちこたえるか(場面依存・負荷)

この形になると、OT/STの所見、看護記録、外来記載、就労資料などと接続しやすくなり、「主観」扱いされにくくなります。


強いのは「医療記録に載りにくい領域」を埋める家族情報

高次脳機能障害では、医療記録だけでは薄くなりやすい領域があります。例えば、

  • 金銭管理、服薬、予定管理などのIADL
  • 家庭内の安全管理(火の不始末、戸締り、危険予測)
  • 対人場面でのトラブル(言い方、距離感、衝動性、疲労で崩れる)
  • “できるのに続かない”“分かったと言うが実行できない”といったズレ

ここは、家族情報が適切に整理されると、生活支障の説明に直結します。
逆に、ここが抽象的なままだと、検査点数や画像の強弱に議論を戻されやすくなります。


家族申告は「医療・就労・行政」と矛盾なく接続できるかが勝負

家族申告が争点で活きるかどうかは、結局、次の接続で決まります。

  • 急性期(混乱・健忘等)→回復期(OT/ST等)→生活期(家庭・就労)の線が通るか
  • 「できている記載」と「できない申告」を、時系列・条件で説明できるか
  • 就労状況(配置転換・業務変更・指導頻度等)と齟齬がないか

ここが整理されると、家族申告は「単なる訴え」ではなく、案件全体を支える“生活期の一次情報”として機能します。


実務で強い進め方:まず一次確認で「申告が弱い原因」を特定し、次に集める資料を決める

家族申告は、量を増やすほど強くなるとは限りません。
むしろ、弱くなる原因(時期の欠落、具体不足、他資料との接続不足)がどこにあるかを見極めて、最小限の追加資料で補強する方が速いです。

一次確認では、手元資料の範囲で

  • 争点に対してどこまで言えるか
  • どこが「主観」と言われやすい構造になっているか
  • 次に何を取れば“線”が通るか
    を整理し、次工程(詳細/依頼状ドラフト/医学意見書)に繋げます。

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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