将来費用は「主治医宛依頼状」の一文で固まる:高次脳機能障害で“前提条件”を医療記録に接続する(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)の将来費用は、前提条件(必要性)と数字(単価等)を整えても、最後に「医療記録に接続できていない」ことで弱く見える場面があります。
この段階で勝負を分けるのが、主治医宛依頼状(照会)と、必要に応じた医学意見書の使い方です。

将来費用は「何を積むか」以上に、どの資料のどの記載に“前提条件”を固定できるかで通り方が変わります。依頼状は、その固定を狙う実務ツールです。


※本記事について(シリーズ位置づけ・免責)

※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第6回です。
第3回(前提条件)、第4回(数字)、第5回(想定反論)までを踏まえ、本稿ではそれらを医療側の記載・資料に接続する局面(依頼状ドラフト/意見書)を扱います。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。


依頼状(照会)が弱いと起きがちな落とし穴

依頼状の設計が弱いと、将来費用の中核である「必要性」が、相手方の反論に回収されやすくなります。

  • 医療側の回答が抽象化し、一般論として処理される
  • “生活上の課題”が固定されず、「医療記録にない」で止まる
  • こちらの主張が家族申告中心に見え、後出しに寄せられる
  • 「制度で足りる/家族で足りる/過大」の反論に対し、医療記録側から支えが出ない
  • 争点整理が進まず、結局「数字の綱引き」になって消耗する

将来費用は、最後に“記載の薄さ”で崩れることがあるため、依頼状は軽視できません。


将来費用で本当に問われるのは「診断名」より「生活上の課題の固定」

将来介護費・見守り・付添・送迎・家事支援等の将来費用は、最終的に

  • 生活上どの場面で
  • どんな破綻(事故・逸脱・遂行困難・対人問題など)が起き
  • その回避のために、どの程度の支援が必要か

という“生活の説明”として評価されがちです。
この説明を、医療側の記載(診療録・リハ記録等)に接続できるかが、将来費用の強度を左右します。


「制度で足りる/家族で足りる/過大」に備えるのは、依頼状の段階から

将来費用では、相手方の反論がかなり定型化しています。

  • 制度で足りる
  • 家族で足りる
  • 過大(便利なだけ)
  • 後出し(初期像が弱い/個別性が薄い)

依頼状の役割は、これらの反論に対し、“医療記録側で支えられる部分/支えにくい部分”を早期に仕分けすることにあります。
後から反論が出て慌てるのではなく、依頼状の段階で「争点になる場所」を見据えておくと、手戻りが減ります。


依頼状で狙うべきは「結論」より「観察・事実・条件」の回収

依頼状というと「必要か不要か」の結論を書いてもらうイメージが強いですが、将来費用との相性が良いのは、むしろ次のような要素です。

  • どの場面で問題が現れやすいか(場面依存・負荷依存を含む)
  • どういう条件で崩れやすいか(疲労、対人、遂行、注意など)
  • 医療側が把握している範囲の事実(診療・リハの文脈での観察)
  • 生活上の課題が継続しうる理由(見通しに関する“条件付き”の整理)

この種の記載が取れると、将来費用の「必要性」が“主張”ではなく“資料”として見えるようになります。


実務で強い進め方:スクリーニング→依頼状ドラフト→(必要なら)意見書

いきなり将来費用積算表(フル版)や意見書に進むより、次の順が合理的になりやすいです。

1)将来費用スクリーニング(A4 1〜2枚)

  • 手元資料で「置ける前提条件/弱い点」を短時間で整理
  • 想定反論(制度・家族・過大・後出し)の当たりを付ける
  • 依頼状で取りに行くべき論点の優先順位を決める

2)主治医宛依頼状ドラフト

  • 争点化しやすいポイントを、医療側が回答しやすい形に整える
  • 回答が抽象化しないよう、聞き方・範囲・前提の置き方を調整する
  • “取りたい記載”を、時系列整理・将来費用の前提に接続する

3)(必要なら)医学意見書

  • 争点が重い箇所を、資料と整合する形で補強する
  • 将来費用の説明が「一般論」に寄らないよう、個別の根拠に寄せる

※どこまでを依頼状で回収し、どこからを意見書で補うかは、事案と争点の見立て次第です。


依頼状作成前に“最低限そろっていると強い”資料

依頼状を強くするには、医療側に「どこを見ればいいか」が伝わる状態が望ましいです。典型的には、

  • こちらで整理した時系列(簡潔で良い)
  • 生活上の課題の具体が分かる情報(出典が追える形)
  • 医療記録・リハ記録のうち、争点に関係する箇所の当たり

があると、依頼状が“空振り”しにくくなります。
(※本稿では、作り方や質問文例などの核となる手順は割愛します。)

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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