将来費用は「最後の整合」の一文でひっくり返る:高次脳機能障害の将来費用を“争点整理→立証→交渉”で回す最終チェック(弁護士向け)
結論(先に要点)
高次脳機能障害(TBIを含む)の将来費用は、個別の費目や単価がそれなりに整っていても、最後に
- 根拠の散らばり
- 前提条件の不整合
- 制度・家族・過大・後出しへの備え不足
- 目的と手段(費目)の混線
- “説明の筋”の欠落
で、相手方の一言に回収されやすい領域です。
最終的に通り方を左右するのは、将来費用が「金額表」ではなく、争点整理として一貫しているか(=どこを読んでも同じ結論に向かうか)です。本稿は、シリーズ全体の総点検として「崩れ方」を先に潰すためのチェックポイントをまとめます。
※本記事について(シリーズ位置づけ・免責)
※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第8回(最終回)です。
第1回〜第7回で扱った「根拠の起点」「前提条件」「数字」「反論」「医療記録への接続」「典型費目」を踏まえ、最終回では全体整合のチェックを整理します。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。
まずシリーズの要点(第1回〜第7回の“まとめ”)
最終チェックは、結局この7点に戻ります。
第1回:根拠の起点(初診HPI)
初期記載が弱いと、後工程が「後出し」「主観」に寄りやすい。
第2回:将来費用スクリーニング
いきなりフルに積むより、どこまで言えるか/不足は何かの見極めが重要。
第3回:前提条件(制度・家族・過大)
将来費用は数字の前に、必要性の土台で揉める。
第4回:数字(費目×頻度×期間×単価)
単価・頻度・期間の“置き方”が雑だと崩れる。
第5回:想定反論→再反論
反論が来てから探すのではなく、争点整理として先回りする。
第6回:医療記録への接続(依頼状・意見書)
前提条件が医療記録に接続できないと「医療記録にない」で止まる。
第7回:典型費目(見守り・送迎・家事支援・通院付添 等)
費目ごとに揉め方が違う。混線すると「重複」「過大」に見える。
将来費用が“ひっくり返る”最後の落とし穴(よくある崩れ方)
最終局面で起きがちな崩れ方は、だいたい次の型です。
1)根拠が「ある」のに、見つからない(引用の不統一)
資料は揃っているのに、どの記載が根拠かが分からず、説明の場で失速します。
2)前提条件と費目がズレている(目的と手段の混線)
“困りごと”の説明と、積んでいる費目が噛み合わないと、便利扱いされやすい。
3)制度・家族の論点が「白黒」で書かれている
制度や家族を全面否定すると、相手方の反論テンプレに乗りやすい。
4)過大に見える形(全部・常に・生涯)
生涯一律・常時一律は、合理性の印象で損をしやすい。
5)重複(同じ目的の二重計上)が残っている
見守り・付添・送迎・家事支援などが並ぶほど、重複チェックが重要になります。
最終チェックリスト(“説明の筋”が通っているか)
ここからは、提出・照会・交渉のどの場面でも効く「総点検」です。
※具体的な運用手順(表の作り込みや書き方の型など)は本稿では割愛します。
A. 根拠(資料)チェック:一言で「どこに書いてあるか」言えるか
- 各主要費目について、根拠が「資料名・日付・該当箇所」で即答できるか
- 事故直後〜生活期まで、時系列として“線”が通っているか
- 初期記載が薄い場合、その限定性(薄い理由)が説明できるか
B. 前提条件チェック:制度・家族・過大の入口で止まらないか
- 「制度で足りる」に対して、“不足”の説明が用意できているか
- 「家族で足りる」に対して、“現に発生している支援”と継続可能性の論点が分かれているか
- “全部・常に”に見えないよう、必要性の範囲が整理されているか
C. 数字チェック:頻度・期間・単価が生活実態から浮いていないか
- 頻度が、生活の場面やリスクと結びついているか
- 期間が生涯一律になっていないか(節目の置き方が検討されているか)
- 単価が「相場だけ」になっていないか(説明の芯があるか)
D. 目的と手段チェック:費目が「何のため」か説明できるか
- 各費目が、どの生活上の課題(目的)に対応するか整理されているか
- 同じ目的に複数費目がぶら下がっていないか(重複に見えないか)
E. 反論耐性チェック:典型反論で一度“通し読み”できるか
- 制度・家族・過大・後出し・重複の5点で、説明の筋が崩れないか
- 反論が出たとき、同じ説明を別資料でも裏打ちできるか(単独資料依存になっていないか)
F. 医療記録への接続チェック:「医療記録にない」で止まる箇所が残っていないか
- 生活上の課題が、医療側の記載に接続できる部分/しにくい部分が仕分けされているか
- 接続しにくい部分がある場合、その扱い(説明の範囲)が整理されているか
最終回のまとめ:将来費用は「整合」を作った側が強い
将来費用は、1つの強い資料や1つの強い費目だけで決まるよりも、複数資料が同じ方向を向く「整合」で通り方が変わりやすい領域です。
最終的には、相手方の反論テンプレに回収されないよう、根拠→前提→数字→反論→記録接続が同じ結論に向かっているかが勝負になります。
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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。
