急性期記録の読みどころ:意識障害・せん妄・健忘の“根拠”を拾う(高次脳機能障害/TBI|弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)では、後から「画像が軽微」「症状は主観」と言われやすい分、急性期の根拠が効きます。実務上は、

  • 救急〜入院初期の所見(GCS、見当識、健忘、せん妄等)
  • 看護記録・リハ初期評価に出る具体
  • “いつからいつまで”の経過
    を、資料名・日付・該当箇所で拾って時系列に置くのが堅いです。

急性期を押さえないと起きがちな落とし穴

  • 後からの説明が「症状の申告」中心になり、反論の的になりやすい
  • 受傷直後の状態(意識、健忘、混乱)が抜けて、経過の説得力が落ちる
  • 「事故との因果」を語る材料が薄くなる(事故直後の変化が示せない)
  • 画像所見だけで語られ、臨床経過が消える

視点①:救急・初期診療で拾うポイント(画像“以外”)

救急・初期診療の記録は、短い一文が後から効くことがあります。
典型の拾いどころは、

  • 意識レベル(GCS等)
  • 見当識(人・場所・時間)
  • 受傷時健忘(前向性/逆行性の示唆)
  • 混乱、興奮、注意散漫などの記載
  • 頭部外傷の状況(打撲、裂創、嘔気嘔吐、頭痛 等)

※「○○なし」と書かれている項目も、時系列で見ると意味が変わることがあります(いつの“なし”か)。

視点②:看護記録が強い理由(“観察”が残る)

高次脳機能の問題は、診察室よりも病棟のほうが露出します。
看護記録で拾いたいのは、

  • 呼びかけへの反応、指示の通り方
  • 夜間不穏、せん妄様、離床・転倒リスク
  • 同じ質問の反復、理解のズレ
  • 服薬・処置への協力度、危険行動
  • 家族への説明場面での反応

ポイントは「評価語」ではなく、具体の行動です。

視点③:急性期〜回復期への橋渡し(経過の一貫性)

急性期の所見が、回復期以降の訴えとつながっているかが重要です。

  • 急性期:意識・健忘・混乱
  • 回復期:注意・遂行・記憶の困難が生活課題に出る(OT/ST等)
  • 生活期:IADL/就労/対人で破綻する場面が出る
    この“線”が作れると、画像所見の強弱に左右されにくくなります。

実務で強い整理の仕方(最小の型)

急性期は、次の最小の型で抜くと後工程(意見書依頼、時系列整理)に使えます。

  • ①日付・時刻(いつ)
  • ②場面(救急、入院初日、術前後 等)
  • ③所見(意識、健忘、せん妄、具体行動)
  • ④根拠(資料名・該当箇所)
  • ⑤後の争点との接続(検査/生活機能/反論ポイント候補)

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※本記事は情報提供であり、医療行為・診断ではありません。

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