「既往・発達特性・精神疾患」を持ち出されたとき:高次脳機能障害/TBIで因果と程度を崩されない整理(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)の紛争では、相手方が「既往歴」「精神疾患」「発達特性」「元々そういう人だった」などを持ち出し、事故との因果や後遺障害の程度を薄めようとすることがあります。
この論点は、真正面から人格評価の議論に入るほど泥沼化しやすく、結果として「主観」「信用性」の争いに引き込まれがちです。

実務で重要なのは、既往の有無を否定することではなく、資料を横断して

  • 事故前の基準(ベースライン)
  • 事故後の変化(いつから、どの領域で、どの程度)
  • 経過の一貫性(急性期→回復期→生活期)
    を示し、因果と程度が崩れない形に整えることです。

既往・素因論が出たときに起きがちな落とし穴

  • 反論が「元々そう」一色になり、事故後の変化が具体化されない
  • 事故前の生活状況が薄く、ベースラインが示せず、相手の推測が通る
  • 家族申告中心になり、「後出し」「主観」「人格攻撃」に流れやすい
  • 医療記録の矛盾(良好所見/不良所見)が整理されず、信用性を崩される
  • 既往の話に引きずられて、急性期の混乱・健忘など“事故直後の事実”が軽視される

既往論は、こちらの立証の弱点(空白・矛盾・接続不足)を突いてきます。そこを先に潰す方が効果的です。


争点は「既往があるか」より「事故後に何が変わったか」

既往・発達特性・精神疾患があっても、事故後に

  • 新たな症状が出た
  • 頻度・程度が増えた
  • 生活機能(就労・IADL・対人)が明確に崩れた
  • 支援や監督が必要になった

という変化が、時系列で一貫して示せるなら、因果・程度の議論は組み立てやすくなります。
逆に、変化が示せないと、「元々」を否定できず、論点が人格評価へ流れます。


強いのは「事故直後の事実」—既往論に対する土台になる

既往論が出たときほど、急性期の客観記録が効きます。
救急〜入院初期に残る意識障害、健忘、混乱、不穏、見当識の揺れ等は、事故後変化の出発点として位置づけやすい“観察事実”です。

相手が既往を強調してきても、事故直後の変化が固く示せると、議論は「元々」ではなく「事故後の経過」へ戻しやすくなります。


回復期〜生活期は「具体」で勝負。抽象語は既往論に飲まれやすい

既往論がある案件では、抽象語(記憶障害、注意障害、抑うつ等)だけで進むほど不利です。
OT/ST・看護・就労・家族情報などで、

  • どんな場面で破綻するか
  • どんな支援が必要か
  • それが事故前とどう違うか

が“出来事”として示せると、既往論は刺さりにくくなります。
ここで重要なのは、資料を増やすことではなく、事故前後の比較ができる形に整理することです。


実務で強い進め方:一次確認で「ベースラインの不足」と「事故後変化の核」を見つける

既往論が強い案件ほど、最初にやるべきは「反論文言」を作ることではなく、手元資料で

  • 争点に対してどこまで言えるか
  • 事故前のベースラインがどこまで示せているか
  • 事故後変化の核になる記載がどこにあるか
  • 足りない資料は何で、優先順位はどうか

を短時間で見切ることです。
この段階で方針が固まると、詳細整理・依頼状・医学意見書の精度が上がり、人格攻撃に引きずられにくくなります。


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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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