失語がなくてもST記録は効く:高次脳機能障害/TBIで「会話が普通」に見える案件の落とし穴(弁護士向け)
結論(先に要点)
高次脳機能障害(TBIを含む)の案件では、失語がないと「言語は問題ない」「会話は普通」と整理されがちです。
しかし実務上は、失語の有無よりも、認知コミュニケーション(会話の運び、理解、病識、社会的行動)が争点(就労・対人・監督の必要性)に直結することがあります。ここに触れ得るのがST記録です。
一方でST記録は、短文・専門表現・場面依存が多く、拾い方を誤ると「特に問題なし」だけが残り、逆に不利になることもあります。
まず手元資料の範囲で「どこまで言えるか/不足は何か/次に何を集めるか」を短時間で整理し、ST記録が“武器になる案件”かを見極めるのが合理的です。
失語がない案件で起きがちな落とし穴
- 会話が成立するだけで「軽い」「問題なし」と要約され、生活支障が消える
- 神経心理検査の点数勝負になり、生活場面の具体が薄くなる
- 外来カルテが要約的で、対人・就労の困難が医療記録に乗らない
- 家族申告中心になり、「主観」「後出し」と反論されやすい
- 就労や対人トラブルが起きても「性格」「適応」で切られる
高次脳機能障害は「話せる=問題ない」になりやすい領域ほど、資料の組み立てで差が出ます。
STは「話せるか」より“会話の中身”を見ていることがある
STの領域は失語だけではありません。
失語がない案件でも、STが触れることがあるのは、
- 指示理解のズレ(聞いたつもり・分かったつもり)
- 会話の逸脱、脱線、まとまりの弱さ
- 自己評価のズレ(病識、メタ認知)
- 社会的場面での不適切さ(対人距離、言い方等)
こうした領域は、就労・対人・監督の必要性の争点に刺さりやすい反面、医師文書には載りにくいことがあります。
ST記録は「薄い」ことが多い。だからこそ接続が必要
ST記録は、1回あたりの記載が短く、専門表現でさらっと書かれることがあります。
そのため、ST記録単体では弱くても、
- OT記録(段取り・遂行)
- 看護記録(病棟での行動)
- 就労資料(対人・業務上のトラブル)
- 家族情報(出来事)
と時系列でつながると、認知コミュニケーションの問題が「生活上の支障」として立ち上がります。
「問題なし」記載があっても、条件(場面・負荷)を固定できれば矛盾にならない
ST記録にも「良好」「問題なし」と書かれることはあります。
これが相手に切り取られると、「対人問題はない」と整理されがちです。
ただ、高次脳機能障害では
- 訓練室では成立する
- しかし複雑な職場・家庭・対人場面で崩れる
という場面依存が起き得ます。
この矛盾を放置せず、時系列と場面で意味を固定できれば、むしろ特徴として説明できます。
実務で強い進め方:一次確認で「ST記録が争点に刺さるか」を判定する
ST記録は、案件によって当たり外れが大きい資料です。
一次確認では、手元資料の範囲で
- 争点に対してどこまで言えるか
- ST記録が核になり得るか/逆に弱点になり得るか
- 生活期(就労・対人)の具体がどこまであるか
- 不足資料・追加取得の優先順位
- 次におすすめの対応(詳細/依頼状ドラフト/医学意見書)
を短時間で整理し、ST記録を“読んだのに効かない”状態を避けます。
ご相談(弁護士・法律事務所向け)
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- 将来費用:将来費用スクリーニング 55,000円(5営業日)/将来費用積算表 220,000円〜
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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。
