「本人は困っていない」と言う案件:高次脳機能障害/TBIで病識の問題を“人格”にせず争点化する(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)では、本人が「困っていない」「元通り」と言い、家族や職場は困っている、というズレが起きることがあります。
このズレは、相手方に「訴えがない=症状なし」「家族の言い分」と整理されやすく、立証の弱点になりがちです。さらに議論が進むと、本人の言動が「性格」「怠慢」「適応」の話にすり替えられることもあります。

重要なのは、本人の発言を否定することではなく、ズレを“病識(メタ認知)の問題を含む可能性”として位置づけ、急性期→回復期→生活期の線で、生活上の支障として整理することです。
まず手元資料で「どこまで言えるか/不足は何か/次に何を集めるか」を短時間で整理し、人格論に引きずられない設計を作ります。


「本人は困っていない」案件で起きがちな落とし穴

  • 本人の申告が重視され、「症状なし」に回収される
  • 家族・職場の説明が主観扱いされ、「誇張」「後出し」と反論されやすい
  • 医療記録が外来中心で薄いと、ズレが記録に残らず立証しにくい
  • 対人トラブルや就労不全が起きても、「性格」「コミュニケーション能力の問題」で切られる
  • 記録上の矛盾(良好所見と問題行動)が整理されず、信用性の争いになる

ズレがある案件ほど、資料の組み立てが弱いと“人格評価”に引きずられます。


ズレは「嘘」ではなく、争点になり得る臨床特徴として扱う

高次脳機能障害では、本人が自分の困難を自覚しにくい、あるいは過小評価することがあります。
この可能性を踏まえると、「本人が困っていない」という事実は、障害を否定する材料にも、障害の特徴を示す材料にもなり得ます。

ただし、これを一般論で述べるだけでは弱く、資料上の具体(場面・出来事・時系列)として示せるかがポイントになります。


強いのは「本人の言葉」ではなく“出来事”で支障を固定すること

本人申告が弱い案件で争点を動かすのは、評価や印象ではなく、出来事として固定できる資料です。

  • 就労:ミス、確認不足、報連相のズレ、配置転換、指導頻度、休職等
  • IADL:金銭・服薬・予定管理、安全面のトラブル
  • 対人:衝動的発言、距離感、トラブル対応の必要性
  • 病棟・リハ:指示理解のズレ、取り繕い、自己評価のズレの示唆(ST等)

“困っていない”と言っていても、出来事が積み上がれば、生活支障としての説明が可能になります。


医療記録に「病識」と書かれていなくても、接続で見えることがある

病識やメタ認知は、診断名のように明記されないことも多いです。
しかし、看護・OT/ST(特にST)の所見や、家族とのやりとり、就労資料の経過を時系列に置くと、

  • 本人は問題ないと言う
  • しかし同じ時期に問題行動・支援が記録される
  • それが事故後経過として一貫する

という形で、ズレが“性格”ではなく“経過の一部”として整理しやすくなります。


実務で強い進め方:一次確認で「ズレが争点になっている原因」を特定する

本人申告が弱い案件は、やみくもに家族申告を増やしても「主観」扱いされやすいです。
一次確認では、手元資料の範囲で

  • 争点に対してどこまで言えるか
  • ズレ(本人と周囲)の裏付けが一次資料で示せるか
  • どの資料が核になり得るか(看護、OT/ST、就労等)
  • 不足資料・追加取得の優先順位
  • 次におすすめの対応(詳細/依頼状ドラフト/医学意見書)

を短時間で整理し、ズレを人格論にしない構造へつなげます。


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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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