一次確認(資料スクリーニング)で何が分かるか:A/B/C判定の使い方(弁護士向け)

結論(先に要点)

一次確認(資料スクリーニング)は、意見書の可否を“断言”する工程ではなく、提供資料の範囲で「争点整理の見通し」を早く作るための工程です。
急性期〜現在までの記録を 根拠(資料名・日付・該当箇所)付きで時系列化し、争点上の 矛盾・空白(不足資料)・反論ポイント候補を抽出します。
その結果として、A/B/Cの判定は「次に何をすべきか」を決めるための実務的なラベルになります。


1. 一次確認で「やること」と「やらないこと」

やること

  • 断片的な資料を同一の時間軸に再配置し、経過の整合性を確認する
  • 記載の食い違い・用語ゆれ・時期の飛びを整理し、争点になり得る箇所を見える化する
  • 足りない資料を「全部」ではなく、優先順位をつけて提示する

やらないこと(線引き)

  • 医療行為・診断・治療助言は行いません
  • 資料が無い箇所を推測で埋めて“ストーリー化”はしません(根拠の明示を優先します)
  • 結果(等級認定や訴訟帰結)を保証するものではありません

2. A/B/C判定の考え方(使い方が本体)

A/B/Cは「当たり/外れ」のラベルではなく、次の手(資料取り寄せ・方針)を決めるための分類として使うと機能します。

A:このまま意見書化の検討に進める可能性が高い

  • 争点に必要な資料が概ね揃っている
  • 急性期〜現在の経過に大きな不整合が少ない
  • 生活機能・検査など、争点との接続が作りやすい

次の一手(例):詳細スクリーニング/主治医宛依頼状/医学意見書の検討

B:追加資料・追加確認で整理できる余地が大きい

  • 決定打が不足しているが、取り寄せで埋まる可能性がある
  • 記録の“空白”があり、ここを埋めないと反論耐性が弱い
  • 職種・施設で記載が散っていて、時系列化で意味が出るタイプ

次の一手(例):不足資料の優先順位に沿って取り寄せ→詳細スクリーニング

C:現時点の資料では意見書化が難しい/別方針が合理的

  • 争点を支える根拠が乏しく、追加資料での改善見込みが低い
  • 主要反論に耐える材料が現時点で見当たりにくい
  • 進める場合は、目的・論点の見直しが必要

次の一手(例):争点設定の再整理/必要なら他の立証手段の検討


3. 一次確認の「納品物」で見るべきポイント

一次確認の価値は「結論」よりも、以下が揃っているかです。

  • 判定理由が“根拠付き”(資料名・日付・該当箇所が示されている)
  • 矛盾・空白が具体的(どの時点が抜けているか、どの記載が食い違うか)
  • 不足資料が優先順位つき(次に何を取るべきかが迷わない)
  • 次工程への接続(詳細/依頼状/意見書へ進む場合の道筋がある)

4. こんなときに一次確認を挟むと効率が上がります

  • 記録が多く、職種・施設で用語と粒度がバラバラ
  • 画像所見が強くない/陰性と言われ、争点の立て方が難しい
  • 時系列が飛んでいて、経過の一貫性が説明しづらい
  • 取り寄せ資料が多すぎて、優先順位が決められない
  • 主治医宛依頼状や意見書に進む前に、見通しを作りたい

まとめ

  • 一次確認は「早い段階で争点整理の見通しを作る」ための工程
  • A/B/Cは“評価”ではなく「次の手」を決める分類として使う
  • 根拠付きの時系列化で、矛盾・空白・反論ポイント候補が見える

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※本記事は情報提供であり、医療行為・診断ではありません。

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