将来費用は「いくら」より先に「何を積むか」:将来費用スクリーニング(A4 1〜2枚)の使いどころ(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)案件の将来費用は、最初から「総額を精密に積む」よりも先に、(1)争点になる費目の柱を特定し、(2)必要性の根拠を資料のどこに置くかを決め、(3)不足資料を優先順位付きで集めることが勝負になります。
この“地ならし”を短時間で行うのが、将来費用スクリーニング(争点整理メモ/A4 1〜2枚)です。

※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第2回です。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。


将来費用が揉めやすい典型パターン(まずここで止まる)

将来介護費・見守り・将来治療/リハ費・福祉用具等は、実務上次の反論が出やすいです。

1)「制度で足りる」

介護保険・障害福祉で代替できる、と言われる一方で、実際には

  • そもそも認定が未確定
  • 上限や提供実態がある
  • 自己負担や“制度で埋まらない穴”が残る
    など、前提の整理が必要になります。

2)「家族で足りる」

高次脳では“身体介助”よりも、見守り・判断支援・逸脱防止が問題になりやすい一方、家族介護として見えにくく、過小評価されがちです。

3)「過大」「後出し」「主観」

初期記載が薄い、生活期の具体が乏しい、などの理由で「必要性」が揺さぶられます。
(第1回で述べた初診HPI・初期像の固定は、ここにも効いてきます。)


将来費用スクリーニングとは(フル版と何が違うか)

将来費用スクリーニングは、提出用の精密な積算ではなく、弁護士・法律事務所が方針決定するための一次整理です。

  • スクリーニング(A4 1〜2枚)
    何を積むべきか/根拠はどこか/不足は何か/反論はどこか を整理する
  • 将来費用積算表(フル版)
    費目×頻度×期間×更新周期×単価根拠×前提条件 を表で積み上げる

この順に進めると、フル版の見積・作業がブレにくくなり、反論にも強くなります。


スクリーニングで見るポイント(弁護士が困るところを先に潰す)

スクリーニングでは、将来費用の“柱”を、生活機能(特にIADL)に接続して整理します。高次脳で典型的に柱になりやすいのは次の領域です。

A)見守り・判断支援(外出安全、服薬、金銭、対人、逸脱防止)

「介護が必要」と言うより、どの場面で・何が起きるから・どの支援が必要かを資料根拠と一緒に置きます。

B)継続リハ(OT/ST等)・フォロー(外来)

検査点数だけでなく、生活機能との接続(できる/できない・事故リスク・遂行面)を手がかりにします。

C)福祉用具・支援機器(認知支援・安全確保)

高次脳では、移動機器よりも「管理・安全・見守り」系の費目が争点になることがあります。必要性の根拠をどこに置くかが重要です。

D)住環境・生活導線(必要な場合)

在宅状況とリスク(転倒・逸脱等)に根拠があるか、追加資料が必要かを見ます。


“根拠が弱い”時に、何を取りに行くか(優先順位)

将来費用は、根拠が弱いと一気に「主観」「過大」に見られます。
スクリーニングでは、次のような資料を優先順位付きで提示します(案件により入れ替え)。

優先度A(まず欲しい)

  • OT/ST記録(生活課題・遂行面・対人・安全に関する具体)
  • 急性期〜回復期の看護記録(せん妄様、健忘、注意・見当識の逸脱など)
  • 神経心理検査(実施日が分かるもの)+所見の文章部分
  • 家族メモ(場面・頻度・具体:外出、服薬、金銭、対人 等)

優先度B(あると強い)

  • 介護保険:認定結果、ケアプラン(作成済みなら)
  • 障害福祉:受給者証、支給決定内容、個別支援計画(利用があれば)
  • 就労関連資料(配置転換、休職、復職評価、産業保健の記録等:ある場合)

納品イメージ(A4 1〜2枚に何が載るか)

将来費用スクリーニングの納品は、次の要素で構成します。

  1. 将来費用の柱(トップ5〜8)
  2. 各費目の必要性の根拠(資料名・日付・該当箇所)
  3. 反論ポイント候補(制度で足りる/家族で足りる/過大/主観 等)
  4. 不足資料の優先順位(次に取るならこれ)
  5. 次工程の提案(積算表へ進むべきか/まず詳細で根拠を厚くすべきか 等)

金額の精密積算は、フル版(将来費用積算表)で前提条件を明示した上で行います。


いつスクリーニングを勧めるべきか(判断の目安)

次のどれかに当てはまる場合、スクリーニングが特に有効です。

  • 将来費用が争点になりそうだが、何を積むべきかまだ固まっていない
  • 相手方から「制度で足りる」「家族で足りる」を言われそう
  • 初期記載が薄い/生活期の具体が弱いなど、根拠の出し方が難しい
  • 先に不足資料の優先順位を決めて、無駄な取得を減らしたい
  • フル版(積算表)に進む前に、適用前提(制度/自己負担等)を整理したい

次回(第3回)予告

次回は、将来費用積算表(フル版)で差が出る「前提条件」の置き方――
費目×頻度×期間×単価根拠をどう書くと反論に耐えるか、そして「制度で足りる」への備え方を解説します。

ご相談(弁護士・法律事務所向け)

交通事故・TBIを含む高次脳機能障害案件について、受領資料を「資料名・日付・該当箇所」の根拠付きで時系列に統合し、矛盾・空白・反論ポイント候補を整理します(メール完結)。

  • 一次確認(資料スクリーニング):通常 33,000円/3営業日
  • 【初回限定】新規の弁護士・法律事務所さま:一次確認 1件無料1事務所1回/重複割引なし
  • 医学意見書:220,000円(税込)
  • 将来費用:将来費用スクリーニング 55,000円(5営業日)/将来費用積算表 220,000円〜

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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