将来費用は「前提条件」の一文が勝負を決める:高次脳機能障害で“制度で足りる/家族で足りる”に回収されない積み方(弁護士向け)
結論(先に要点)
高次脳機能障害(TBIを含む)の将来費用は、「何をいくら積むか」以前に、前提条件で勝負が決まります。
前提条件とは、「生活上どの場面で、何が起きるから、どんな支援が必要か」という土台です。
将来費用は、相手方から
- 制度で足りる
- 家族で足りる
- 過大(便利なだけ)
- 後出し(個別性がない)
に回収されやすい分、どの資料のどの記載を根拠に前提条件を置けるかで強度が変わります。
積算表(フル版)の前に、まず「前提条件を資料に着地させて置く」ことが、手戻りを減らす近道です。
※本記事について(シリーズ位置づけ・免責)
※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第3回です。
将来費用は、費目や単価の議論に入る前に、前提条件(必要性・担い手・頻度・期間・制度代替の限界)を置けるかで結果が変わります。本稿では、その前提条件の置き方を扱います。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。
前提条件が曖昧だと起きがちな落とし穴
前提条件が弱い(または書かれていない)まま将来費用を積むと、次の形で崩れやすくなります。
- 費目や金額の話に入る前に「制度で足りる」で終わる
- 「家族で足りる」に回収され、支援の継続可能性(介護者の就労・高齢化・同居終了等)が議論されない
- 必要性が抽象的で、「便利」扱いされる
- 費目が重複して見え、「過大」「盛りすぎ」と言われる
- 期間が生涯一律で、合理性を欠く印象になる
将来費用は、数字の問題というより「前提の設計」で負けることが多いです。
前提条件は「生活機能(IADL等)」から置くと強い
高次脳機能障害の将来費用は、麻痺の有無よりも、生活機能(IADL)の崩れ方から必要性が説明しやすい場面が少なくありません。たとえば、
- 予定管理ができない
- 金銭管理・服薬管理が危うい
- 外出・移動が段取りで破綻する
- 対人場面でトラブルになる
- 疲労や負荷で崩れる(場面依存・負荷依存)
この「どの場面で、どう困るか」を前提条件として置けると、費目が“便利”ではなく“必要”として組み立てやすくなります。
典型反論①「制度で足りる」への備え方(制度を否定しない)
制度は相手方の強いカードです。制度を全面否定すると、議論が荒れやすくなります。
実務で強いのは、制度を織り込んだうえで、不足を前提条件として置く進め方です。
不足になりやすいポイント(例)
- 制度の対象外(制度の射程外)
- 上限(回数・時間が足りない)
- 空白(夜間・突発・対人トラブル等のカバーが難しい)
- 地域資源(供給不足で現実に回らない)
「制度を使っても残る課題」が置けると、自費部分が“上乗せ”ではなく、不足の補填として整理しやすくなります。
典型反論②「家族で足りる」への備え方(現に発生している支援を固定する)
高次脳機能障害では、身体介助よりも
- 見守り
- 判断支援
- 段取り支援
- トラブル回避(対人・金銭・服薬など)
の支援が中心になることがあります。ここは家族が無償で担っていると「ゼロ」に見えがちです。
だからこそ、積算の前にまず
- 誰が
- 何を
- どの頻度で
- 介入しないと何が起きるか(具体)
を前提条件として固定しておくと、「家族で足りる」の一言で消されにくくなります。
そのうえで、将来も無償で継続できるか(同居終了、介護者の就労・高齢化、家庭内負担の限界など)を、前提条件として置きます。
典型反論③「過大」への備え方(生涯一律にしない)
将来費用が過大に見えやすいのは、「生涯ずっと同じ支援が満額で続く」形です。
反発を減らすには、前提条件に節目(フェーズ)を置きます。
節目(フェーズ)の置き方(例)
- 復職前後
- 生活環境の変化(同居形態、支援者の変化)
- 加齢に伴う変化
フェーズがあると、「必要な時期に必要な分だけ」という構造になり、合理性が出ます。
(※どのフェーズを置くかは、事件の方針に合わせて調整が必要です。)
実務で強い進め方:積算表(フル版)の前に、スクリーニングで“前提条件”を地ならしする
将来費用は、いきなり積算表(フル版)の数字に入ると、後から前提が崩れて手戻りが出やすいです。
まずは手元資料の範囲で、次を短時間で整理しておくのが合理的です。
- 前提条件として置ける部分/置けない部分
- 「制度で足りる/家族で足りる/過大」への弱点はどこか
- 空白を埋めるべき資料は何か(優先順位)
- 将来費用を積む必要があるか(範囲と方向性)
この整理に向くのが、将来費用スクリーニング(A4 1〜2枚)です。
前提条件が固まると、積算表(フル版)の数字が「必要性の結果」として通りやすくなります。
前提条件を置くのに効きやすい資料(例)
前提条件は「一般論」ではなく、「この事案のこの場面」で置く必要があります。効きやすい資料は、たとえば次です。
- 急性期:救急・看護記録、病棟記録(観察の具体が出やすい)
- 回復期:OT/ST/PT記録(遂行・段取り・対人などが出やすい)
- 生活期:就労・学校・支援機関の記録(“場面”の具体が出やすい)
- 家族情報:具体的な失敗・事故・介入内容(頻度・理由の固定に効く)
- 制度関係:申請・認定・利用サービス・上限(「制度で足りる」対策)
次回(第4回)予告
次回は、前提条件を数字に落とす段階として、費目×頻度×期間×単価をどう根拠づけるか(単価根拠、見積、制度単価、突っ込みどころの潰し方)を解説します。
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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。
