将来費用は「単価根拠」の一文で崩れる:高次脳機能障害で“費目×頻度×期間×単価”を資料に着地させる(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)の将来費用は、前提条件(必要性)が置けても、最後に「単価根拠がない」「頻度が浮いている」「期間が生涯一律」で崩れがちです。
将来費用積算表(フル版)で強いのは、数字を

  • 費目(何を)
  • 頻度(どれくらい)
  • 期間(いつまで)
  • 単価(いくらで)
  • 根拠(どの資料のどの記載で)

に分解し、相手方の典型反論(高い・長い・重複・制度で足りる・家族で足りる)を先回りして「資料に着地」させる組み方です。


※本記事について(シリーズ位置づけ・免責)

※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第4回です。
第3回では“前提条件(必要性・担い手・制度代替の限界)”の置き方を扱いました。本稿では、その前提を数字に落とす段階(費目×頻度×期間×単価)を解説します。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。


将来費用の数字が崩れる典型(よくある落とし穴)

数字の組み方で崩れやすいポイントは、だいたい決まっています。

  • 単価が「相場」だけで、この事案の根拠になっていない
  • 頻度が生活実態から浮いていて、過大に見える
  • 期間が「生涯一律」で、節目(フェーズ)がない
  • 費目が重複しており、二重取りに見える
  • 制度でカバーできる部分を織り込まず、「制度で足りる」に回収される
  • 家族が担っている部分の扱いが雑で、「家族で足りる」に回収される

前提条件が置けているほど、最後にこの“数字の作法”で差がつきます。


数字は「1行=1論点」:積算表の基本形(最小単位)

将来費用積算表(フル版)の1行は、次の形に分解すると強度が上がります。

①費目(何を)

例:見守り(外出・金銭・服薬)、送迎、家事支援、通院付添、就労支援、福祉用具・機器、リハ関連 など

②頻度(どれくらい)

「毎日」「週3回」ではなく、できれば“場面”とセットにします。
例:通院日は付添が必要/買い物時は判断支援が必要/対人負荷が高い場面で崩れる 等

③期間(いつまで)

生涯一律にせず、可能なら節目(フェーズ)を置きます。
例:復職前後、同居形態の変化、介護者の就労・高齢化、加齢変化 等

④単価(いくらで)

単価は「高いか安いか」ではなく、根拠があるかで勝負が決まります。

⑤根拠(どの資料のどの記載か)

根拠は「資料名・日付・該当箇所」で固定します。
これがあると、相手方の「後出し」「一般論」に回収されにくくなります。


単価根拠の置き方(相手方に突っ込まれにくい順)

単価は、強い根拠から順に並べると設計しやすいです。

1)見積(最も分かりやすい)

  • 具体的サービス(事業者名/内容/単価/回数)の見積
  • “何に対する支出か”が特定できる

※見積は強い反面、「そのサービスが必要な根拠(前提条件)」が弱いと“贅沢”扱いされます。見積だけで押すのではなく、必要性の根拠とセットで。

2)制度単価・公的単価(「制度で足りる」反論にも接続しやすい)

  • 介護保険や障害福祉等の単価体系
  • 「制度で賄える部分/不足する部分」を分ける材料になる

3)実費(領収書・利用実績)

  • すでに発生している費用は、根拠として強い
  • ただし“たまたま”の支出に見えないよう、頻度・期間の前提が必要

4)相場資料(補助的)

  • 相場は最後の補強に回す
  • 相場だけだと「この事案では不要」「過大」と言われやすい

頻度の置き方:数字を“生活実態”に寄せる

頻度は、「気持ちの多さ」ではなく「生活の破綻パターン」に寄せると強いです。

生活実態に寄せるコツ

  • 「週◯回」より、「どの場面で必ず必要か」を先に置く
  • 例:通院/買い物/役所手続/対人場面/金銭管理のイベント など
  • 介入しないと起きる事象(事故、逸脱、トラブル)の具体があると、頻度が“安全確保”として見える

頻度が浮くときの典型ミス

  • 何でも「毎日」で揃える
  • 生活のフェーズが変わるのに頻度が固定
  • 支援者(家族・事業者)の役割分担が曖昧で、過大に見える

期間の置き方:生涯一律にしない(節目=フェーズで合理性を作る)

期間は、将来費用の一番大きいレバーです。ここが雑だと、全体が“盛りすぎ”に見えます。

フェーズを置く例

  • 受傷〜復職前(支援が厚い)
  • 復職後(崩れる場面が特定され、支援が再設計される)
  • 同居形態の変化(支援者の変更)
  • 介護者高齢化(家族前提が崩れる可能性)

「ずっと必要」ではなく、「どの局面で、どの程度必要」と分けると、反論耐性が上がります。


「重複(=二重取り)」を避ける:費目の交通整理

将来費用は、費目を足せば足すほど強くなるわけではありません。重複があると、全体が疑われます。

重複に見えやすいパターン

  • 見守り/家事支援/付添/送迎が、同じ時間帯・同じ目的で重なっている
  • 同じ生活課題に対し、複数サービスを満額で積んでいる
  • 制度内サービスと自費サービスが、分解されていない

交通整理の方法

  • 「生活課題(目的)」を先に置き、費目を目的に紐づける
  • 制度でカバーされる部分は別列で控除・調整する
  • 同じ目的の費目は、同時に走らせず“役割分担”を書く

「制度で足りる」への数字面の備え:控除・調整の書き方

制度を織り込まない積算は、「制度で足りる」で止まりやすいです。

実務上の置き方(積算表の列で管理)

  • 制度で賄える部分(回数・時間・単価)
  • 制度の上限・空白・対象外
  • 自費で必要な不足分(不足の理由つき)

制度を“敵”ではなく、“整理の道具”として使うと、主張が通りやすくなります。


実務で強い進め方:スクリーニングで「数字にできる/できない」を先に判定する

将来費用は、数字を作る前に「数字にできる根拠が揃っているか」を見た方が早いです。

将来費用スクリーニング(A4 1〜2枚)では、手元資料の範囲で

  • 前提条件として置けるか(必要性・担い手・制度代替)
  • 数字に落とすための不足(見積が必要/制度単価を使う/実績が足りない)
  • 重複・過大・後出しに見えるポイント
  • 積算表(フル版)に進むべきか(範囲と方向性)

を短時間で整理し、積算表(フル版)での手戻りを減らします。


次回(第5回)予告

次回は、将来費用積算表(フル版)の実務運用として、「想定反論→再反論」をどこまで表に織り込むか(反論メモ欄の作り方/争点整理への転用)を扱います。

ご相談(弁護士・法律事務所向け)

交通事故・TBIを含む高次脳機能障害案件について、受領資料を「資料名・日付・該当箇所」の根拠付きで時系列に統合し、矛盾・空白・反論ポイント候補を整理します(メール完結)。

  • 一次確認(資料スクリーニング):通常 33,000円/3営業日
  • 【初回限定】新規の弁護士・法律事務所さま:一次確認 1件無料1事務所1回/重複割引なし
  • 医学意見書:220,000円(税込)
  • 将来費用:将来費用スクリーニング 55,000円(5営業日)/将来費用積算表 220,000円〜

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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