将来費用は「費目選び」の一文で揉め方が決まる:高次脳機能障害で争点化しやすい費目と“突っ込まれどころ”(弁護士向け)

結論(先に要点)

高次脳機能障害(TBIを含む)の将来費用は、前提条件や単価の前に、「何を将来費用として立てるか」で揉め方がほぼ決まります。
費目の立て方が雑だと、相手方は

  • 制度で足りる
  • 家族で足りる
  • 過大(便利なだけ)
  • 重複(二重取り)
  • 後出し(医療記録にない)

のどれかに回収しやすくなります。

逆に、費目ごとに「争点になりやすいポイント」を踏まえて整理できると、交渉でも訴訟でも説明がブレにくくなります。


※本記事について(シリーズ位置づけ・免責)

※本記事は「将来費用積算表(高次脳)」シリーズ第7回です。
第6回では、将来費用の前提条件を医療記録に接続する局面(依頼状・意見書)を扱いました。本稿では、実務で揉めやすい典型費目を題材に、反論されやすいポイント(=争点)を整理します。
※本記事は情報提供であり、医療行為(診断・治療)ではありません。


典型費目は「揉めやすい理由」がだいたい同じ

高次脳機能障害の将来費用でよく出てくる費目は、見守り・送迎・家事支援・通院付添などですが、揉めやすい理由は共通しています。

  • 身体介助のように「要る・要らない」が見えにくい(=“便利”扱いされやすい)
  • 場面依存・負荷依存で、短時間の観察では軽く見える
  • 家族が無償で担っていると「元々できている」に見える
  • 制度の話(介護保険等)に回収されやすい
  • 似た費目が並ぶと「重複」扱いされる

この前提で、費目別に「突っ込まれどころ」を見ておくと整理が早いです。


費目① 見守り(監督・声かけ・安全確保)

突っ込まれどころ(典型反論)

  • 具体性がない(何を見守るのか不明)
  • “常時見守り”が過大に見える
  • 家族で足りる
  • 制度で足りる
  • 事故が起きていない=不要、にされる

争点になりやすいポイント

  • 見守りが必要な理由が「一般論」になっていないか
  • “やらないと何が起きるか”が、抽象のままになっていないか
  • 「常時」なのか「特定場面」なのかが整理されているか
  • 他の費目(付添・送迎等)と役割が重複していないか

費目② 送迎(移動支援)

突っ込まれどころ(典型反論)

  • タクシー等は贅沢(過大)
  • 公共交通・制度で足りる
  • 家族送迎で足りる
  • そもそも外出頻度が不明(頻度が浮く)

争点になりやすいポイント

  • 「移動そのもの」ではなく、移動に付随するリスク(迷子、判断ミス、対人、疲労で崩れる等)が整理されているか
  • 送迎が必要な“場面”が限定できているか(何でも送迎、に見えると弱い)
  • 付添と送迎が同じ目的で二重計上になっていないか

費目③ 家事支援(生活援助)

突っ込まれどころ(典型反論)

  • 家事は元々得手不得手がある(事故との因果を争われる)
  • 便利なだけ(過大)
  • 家族で足りる
  • 制度で足りる(生活援助の範囲に回収される)

争点になりやすいポイント

  • 家事能力の事故前後差が曖昧だと、因果で揉める
  • 「家事ができない」ではなく、どの工程で破綻するか(段取り、注意、忘れ、危険回避など)が整理されているか
  • 生活全般の見守りと家事支援が混線していないか(目的の交通整理)

費目④ 通院付添(同行・説明補助・手続補助)

突っ込まれどころ(典型反論)

  • 医療側は付添を求めていない(医療記録にない)
  • 家族で足りる
  • 毎回は過大

争点になりやすいポイント

  • 付添の目的が「移動」なのか「診療の成立(理解・記憶・説明)」なのか
  • 付添が必要な局面が限定できているか(全部毎回、に見えると弱い)
  • 送迎・見守りと役割が重複していないか

費目⑤ 就労・社会生活に関する支援(調整・支援者介入等)

突っ込まれどころ(典型反論)

  • それは会社側の配慮の範囲(費用化に反発が出やすい)
  • 一般論で個別性がない
  • 期間が読めない=過大

争点になりやすいポイント

  • 支援が必要な理由が「症状名」だけで止まっていないか
  • 支援の目的(再発防止・トラブル回避・継続就労)と手段の対応が整理されているか
  • フェーズ(復職前後・配置転換・環境変化等)が置けるか

費目を増やすほど大事になる:「重複(=二重取り)」の見え方

将来費用は、費目が増えるほど「重複」に見えやすくなります。特に、

  • 見守り × 付添 × 送迎
  • 家事支援 × 見守り(生活全般)
  • 制度内サービス × 自費サービス

の重なりは、相手方が狙いに来やすいところです。
費目ごとに“目的(何を防ぐ・何を成立させる)”が分かれていないと、全体が過大に見えやすくなります。


実務で強い進め方:費目ごとに「争点の当たり」を付けてから設計する

将来費用は、最初に「全部入りの積算」に行くほど手戻りが増えやすいです。
先に、費目ごとに

  • どの反論が来そうか(制度/家族/過大/後出し/重複)
  • その反論に対し、資料側の支えが厚いか薄いか
  • そもそも将来費用として立てるべきか(優先順位)

の当たりを付けておくと、争点整理が進みやすくなります。
(※本稿では、具体的な整理手順や表の作り方などの“核となる運用”は割愛します。)


次回(第8回・最終回)予告

最終回は、シリーズ全体のまとめとして、将来費用を「争点整理→資料収集→照会→交渉」で回すためのチェックポイント(落とし穴の回避)を整理します。

ご相談(弁護士・法律事務所向け)

交通事故・TBIを含む高次脳機能障害案件について、受領資料を「資料名・日付・該当箇所」の根拠付きで時系列に統合し、矛盾・空白・反論ポイント候補を整理します(メール完結)。

  • 一次確認(資料スクリーニング):通常 33,000円/3営業日
  • 【初回限定】新規の弁護士・法律事務所さま:一次確認 1件無料1事務所1回/重複割引なし
  • 医学意見書:220,000円(税込)
  • 将来費用:将来費用スクリーニング 55,000円(5営業日)/将来費用積算表 220,000円〜

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注意:本記事は情報提供です。医療行為(診断・治療)ではなく、後遺障害等級の認定・訴訟結果等の保証はできません。個人の方からの直接依頼は原則お受けしていません。

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